靴の戯れ言

こうべくつ家で作られる革靴やイベント、靴教室について

いなたくてプリミティブ

 

ヌメ革の表面にパラフィン加工をした革を見つけました。

擦ると白かった表皮から少し、革本来の色が覗かせました。

 

ハリがあり、耐久性もある。

じっくりと育つ革だと感じ、靴にしてみたくなりました。

 

出来上がりは真っ白で。

次第に飴色に変化する靴。

 

物語は私の頭の中で、むくむくと出来上がっていました。

 

 

 

しかし。

 

その想像は、ラスティングの最中に脆く崩れました。

その白く雪のような表皮が、作業中の膝の上で取れてしまうのです。

 

釘を使い、

木型にそれをそわせるために強く引っ張ると、その度に白は剥がれます。

 

膝の上でのベンチワークに耐えられずこぼれ、

本来の革が現れる姿は、想像していたそれとは違うものでした。

 

 

 

ああ。

 

ため息を一つ吐き。

ラスティングを終えた靴をみて、愛おしさが込み上げてきました。

 

それはそこに。

もう、何年もあったかのような靴の顔をしていました。

 

新品の。

あの、なんだか恥ずかしいような、よそよそしいものではなく、そこにずっとあったような、懐かしい感覚を覚えました。

 

擦れてとれて、出てきた地肌と。

引っ張られて小さく、クラックが入ったパラフィンと。

 

 

 

いなたくてプリミティブな靴。

この革を使うと、そうしようと思わなくても、そうなるのです。

 

革の名前は ネーヴ。

 

 

 

思いがけず突然に試したくなって、仕入れた革なので、

今後も展開するかは決まってませんが、

明日から始まる、東京受注会のオーダー分はお作りさせていただこうかと思っています。

 

なんだかいろいろ感じていただけるマテリアルを見つけました。

よろしければ見にいらしてください。

 

 

 

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